不動産関連の話が好きなので、この話はオーストラリアでの物件探し、好奇心に駆られて物件描写の絵と共に楽しんだ。そしてつまりは、物件ではなく女を掴んだ話。
話のほぼ滑り出し段階から、別の人と付き合っていて結婚もそろそろと考えてる彼が、ヒロ
インを見た瞬間からヒロインに抱いてしまう感情を読み手に明かす。出会ったその時から、一目で陥り日々囚われてしまう感情。会ってその持て余すものを解消したい。しかし、会えば会ったで、また会いたい気持ちが新たに生まれてしまう。
出会ってしまったらもう出会う前の気持ちにはなれない。初期の振り払おうとする感情も、気持ちをスッキリするために会って、そこから、恋人へ気持ちを戻そうと思っても出来ることじゃない。
そんな一連の想いが、彼の心情描写と行動とになるのだが、弁護士先生には相応の交際女性が居るわけで、ヒロインとしては素敵な男性だと認識してもどうするつもりもなかった。でも彼の止まらない感情を前に、自分の気持ちも隠すつもりもなくー。
DV地獄から、ヒロインはようやく立ち直り始めていた。自分への自信、地味ながらこの話のもうひとつのメインテーマが真面目に届いてくる。
ヒロインは他人に語れなかった辛い古傷を抱える、壮絶な結婚生活の経歴の持ち主。
HQは、不幸にもがいていた女性を男性との恋愛によりその運命を変えるハピエンストーリーで、読み手の気分を浄化してくれるので、これもまたほっとするけれど、冒頭の運命を思わせるシーンは存在意義不明。それが運命、とするのなら、ストーリー中、二人の進展の中に絡んで来ないと!
それと、人物絵がじっくり描いた感じがなかった。物件巡りでの家屋敷描写にエネルギーが割かれたかもしれないが、HQコミックは、二人の人物描写命だと思っている。
それと、ピンストライプとされるスーツ、トーンが違うと思うのだが?
「冷静な」弁護士らしく彼が事実確認を積み上げるところは、とても興味深い理詰めの展開で、それはそれで悪くなかったが、言葉重視に陥らざるを得ない箇所となってしまい、その分、甘さが無くなる。
とうとう二人の気分が一線を越えるというときの、彼らの気持ちの高ぶりを、私ももう少し味わいたかった。
それでも、好きになるということは、彼がいるのに、とか、夫がいるのに、とは無関係なところで走り出してしまう感情である、というところは描けていたと思う。
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