ある大雪の時の出逢いが転換点となり、そのひと夜の情熱が再会を呼ぶ。
作者あとがきでいうところの「雪に閉じ込められたふたりが/雪の中で結ばれる様式美なお話」。
確かに!
このパターン、HQでも何度読んだかわからない。
でも、その特異な
シチュエーション萌えで、ロマンチックさ倍増は否めない。藍先生は、黒遣いが巧みだから、雪の描写も余計格好いい。
反面、スキー場面はHQではなかなかお目にかかれず、これほど読んで来ていてまだ二度目、一冊目は以前同じく藍先生の手になる作品「プレイボーイのためらい」だけ。まだ他のHQでは見ていない。
しかもキャラがスキーする場面は、先生の絵は全くダサくない。この点は特筆もの。雪山が雪山に描写されている。画力が無いと、スキー描写、冬の山中描写は厳しいと思う。
アクション映画ばりの追跡よろしく前半はお騒がせ娘ハンナの消息確認までがひとつのヤマ場。構成力あるため、出逢い、ふたりの行動、娘の捜索と盛り沢山ありながらの、ゆきずりのラブ要素色濃いロマンチックな時間もしっかり。スッキリ全て無理なく見せる。
後ろ髪引かれながらのその後の日々を描くなか、あのときのことを思い返し、それでも道は分かれたかのよう。
上手いとここでも思うのは、あの日を境に変わった娘ハンナとの関係。前と後と、鮮やか。
そして、義母に遠慮して逆に今度は義母の生活に歩調を合わせ、疲労を溜め込む姿に胸を痛め、そして動くそのハンナの健気さが胸にチクッとくる。おっと、それは、遺産はハンナとの生活に自身が体調悪くするくらいなら、少々楽をするために使っていいのでは、クライマックスでそこに使おうとするほどまだあるのならば、とは思った。
疑り深い定番男性が信じようとする心の過程が良いが、彼の義母の浅ましさが最後まで甦るのではとの懸念は晴れない。スッパリそこは絶縁の安心感が欲しかった。
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