人の死を扱うドラマが昨今多いような(特に映画)気がして、サスペンスものでもないのに、この最もドラマになってしまう、人生最大にして最後のものを安易に題材にするというのを、創造性の反対に私は感じる。
しかし、そこに、親がいないという始まりにす
るストーリーは、毎日を生きる励ましに代わる。
悲劇も事件も、それにまつわる人間模様が、やはりどうしたって胸に来る。
題材をどこに取るか、作者の傾向もあるし、世の中のなにか出来事に刺激を受けることもあるだろうし、ご担当の編集者など出版サイドの戦略もあろうが、望月先生は心模様をじわっと言葉に乗せてあるので、死を以て創作をラクにしてない気はする。
紋切り型でない経過を辿る十人十色の思考回路が、逆に吸引力を持つ。
突拍子もないというわけでもない。
年頃の子達の会話が生き生きしていて、その臨場感が、既視感ある光景に思わせる。先生の製作時の年齢を存じ上げないが、相当の感受性か想像力をお持ちなのだろうと思う。
写真の少女の話が、多少望月先生にしては平凡だったかなと思う。
そのテの話は少々手垢の付いたジャンルかと。それでも、彼の、少女との出会いから、結末の彼女の屈託の無い表情を彼の手元のフレームに収めるところまで、実に手際のいいまとまりを見せて流石。
昨今、読者レベルに合わせて、恋愛ものは結婚シーン描写圧力が掛かっているようで、作家魂をお持ちの人には面倒な時代かと同情しているが、一連の望月先生作品を読んできて、これくらい自由にやらせてあげたらいい、と、つくづく思った。
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