生き抜くことって、死なないことよりももっとポジティブなのだと、闘うことなのだと感じた。
ヒロインは懸命に自分の敵だらけの中で、拳を振り上げて生きていかざるを得なかった。
彼は、ヒロインに、とんでもない野卑たものを見て愕然としているのに、
そのヒロインのなかに僅かに異性としての関心も同時に持つ。
なにもかもが荒れ放題。花嫁となる人の気持ちも外見も、そして、結婚が決まって居住の為に乗り込む花嫁の居城も、また、周囲の人心も。すべてすべてが、荒れているなか、やれることを少しずつやる夫ジェフリー。
荒れ馬を乗りこなすというよりも、手なづけるというよりも、辛抱とそして共有する時間の蓄積・経過。その間の問題なさが証明され、彼女の敵を駆逐していく彼の行動が、彼女の全ての警戒心を融かした。
このストーリー、髪に触れる、という動作に彼らの愛を凝縮させている。髪に触れたい欲求をこうも攻めたストーリーは私にはあまり記憶がない。髪の色へのこだわりのほうなら、HQが外国ものであるためお馴染みなのだが。
敵意から愛情に移るストーリーが主軸のせいか、何人かの悪人は割と簡単に退けられてしまう。彼が少しずつヒロインの敵を除去して、本丸の彼女の真の姿を見ることが、各エピソードで重視されるからだろう。
両巻の巻頭カラー頁多くて目を楽しませてくれる。
208頁目のエレナの後ろ姿は描く時間が足りなかったのだろうか? 電子書籍を読み始める以前、先生のHQ 作品中の絵で、まるで急いで描かれたような印象を持つものがちょくちょくあったと記憶しているのに、この作品ではその小さなひとコマだけだ。
このストーリーに登場する他の兄弟も話がありそうだが、未読でも堪能はできる。
同じ原作者でやはり、日高先生がコミカライズした「尼僧院からの花嫁」と似た型のストーリー。
1巻目では、二人の仲はどうやって歩み寄れるのか、との興味の繋ぎかたも似ている。
あちらのほうが、振り子の右から左への揺れかたがより激しいと感じた。
こちらは、最初から両人が心の底に抱いてしまっている密かな関心が、兄弟とのやり取りや城内の人々とのあれこれの発生の隙間に途切れず続く点が、尼僧院ーのほうと違うところかと思う。
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