涙が何度も搾られて、間違いなく主人公はハリーだと思ってしまう。親を喪い、自分のこの先が漠然と孤独と恐怖と不安とに揺れるまだまだ親が必要な男の子。ヒロインはHQには普通に居る愛情溢れる育ての母を精一杯務めている。
もう、これだけで、私の胸は
詰まってきて苦しくて、HQなんだから幸せになれると決まっているんだからと、自分に言い聞かせながら読み進める。
クリスマスシーズンとなると、思い出すのはディケンズの、クリスマス・キャロル。冒頭から、スクルージ扱いされたのが、ヒロインのお相手カレン。
ヒロインとハリーの慎ましいけれど一生懸命な生活ぶりと、ハリーの心の中の家族を求めてやまない強い思いが、家庭の愛情溢れる空間を、かつて暖かいと思えなかった、自身も幼時を過ごした、まさにその家の中に、カレンも一員となって作り出す。自身の姿をハリーの中に見出だして。差し出す手の絵が象徴的。
胸の張り裂けそうになる、ハリーのママやパパを欲しいと思ういじらしさが、祈りを通り越して訴えかけてきて、本当に読んでいてこたえてきて、お話とわかっていても、結論に早くたどり着きたくて胸がはやって、集中して読み進めてしまう。
カレンは終始、少しも悪い人じゃない。ただ、家庭をこれまで持つなど考えて来なかった。
スクルージは誰?
ストーリーの悪役は最後まで悪役。
あの父親がここのスクルージなのだけれど、本家のクリスマス・キャロルなら自分の非道ぶりを反省するのだから、最後までその悔悛の姿の描写なき強つくオヤジぶりではスクルージにもなれない。
人物の絵は全く好みではない。しかしいいお仕事ぶり。人物以外は、特に厚い雲の立ち込める冬の町の景色など見事。
翻訳調の独特な言葉の選択でハーレクインの原作が横文字文学(!?)であることありあり。そこが、味わい、というかアクセントになっている。それに、スモア、恥ずかしながら初めて知った。(どんなものが検索したくらいだ)せめて絵か言葉説明欲しかった。そこも含め、町のお菓子工場の企業城下町の絆と共にいい味だしている。
ドラマによく、聞きたくない、などと耳を貸さない場面があるが私には疑問符。
メイン二人の関係に山谷がさほどあるわけではないので、ハラハラドキドキな関係を見守るような話ではない。
カレンを巡る噂が事実に反していることをもう少しすっかりビジュアルで確認したかった気持ちはある。
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