ハーレクイン文庫版で読んだ。
確かにヒロインが人から得たお金で生きたくないとそう思うに至る半生は、自分は誰か別の人なのだと思わなければ生きてはいられない局面が多かった、と思う。そして、自力で生きているからこそ、つまり、安易に人の懐に頼
らなかったからこそ、世間の垢にまみれず、身を落とすことも無かった。低い賃金であろうとも、ウェイトレスや掃除婦という職業を選んできた中で、ある日遭遇したトラブルの末に偶然手にしたものは、日常とはかけはなれた時間を過ごせるチケット。自分は自分以外の人間だと思うことが出来る格好の場で、自分を解き放つ事を期待したのだった。
愛情深い両親のもとで育ったアンゲロスは、小うるさいけれども心配してくれている存命中の父親のことを、家族としてとても大切にしている。
しかし、お金があるから、まわりの異性がほっとかない。それを、アンゲロスもよく認識して生きている。本当は、お金がなくても異性の目を惹き付けずにはおれないほどの容姿を、持ってはいるが。
ヒロインの矜持が傷つかない決着。彼アンゲロスは元来異なる男女観を持っていたが、ヒロインシャンタルがそれを変えた。彼女と共に生きる未来の為に彼は、二人が折り合える生き方を考えた。
なんていう激変ぶりだろう。
そうかそんなに大事だったんだ、と提案時のあれこれに逆に感動した。そして、私が大好きなパターン、相手が何者なのかに関係なく好き、というのが気持ちいい。
作中わざわざ言及されていないことがある。
本当は、ヒロインは、逆に、お金で支払えなかった、対価の付いていないものを、最終的に得ているけれど、彼女はまだ気づけていない事。
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