各国の軍隊で採用されている刺繍製の徽章、ミリタリー・パッチのなかでも、アメリカ海軍航空隊のパッチは特殊だ。世界の海を股にかけて作戦を実施する彼らは、自分たちの所属部隊を示す徽章(インシグニア)はもちろんのこと、寄港地(展開地)や作戦、演習、自身の経歴を記念したパッチを製作、それらをフライトジャケットに付ける。規律正しくあるべき軍の制服の一部であるフライトジャケットなのに、彼らのそれは背中までパッチで埋め尽くされ、まるで映画『トップガン』に出てきた主人公マーベリックのレザージャケットそのものだ。パッチのたくさん付いたフライトジャケットは、空母という海の上の閉鎖的な空間で命をかけて任務に従事する彼らの数少ない自己主張であり、“おしゃれ”でもある。映画に登場するジャケットは、ネイバルエビエーター(海軍航空要員)が着用するジャケットが参考にされている(パッチそのものは正確ではないが)。また、部隊徽章“インシグニア”の図柄は色とりどり、さまざまなデザインで、部隊の歴史や由来が表現されたりモットーが刻まれたりしており、彼らの誇りが詰まっている。ミリタリー・パッチは単にその所属を識別するためのものではなく、軍隊としての士気を高め、団結力を強める大事なアイテムなのだ。本書は、空母をベースに任務に就くアメリカ海軍空母航空団の関連パッチのほか、陸上ベースの哨戒部隊やヘリコプター部隊、海軍とともに上陸作戦の援護に当たるアメリカ海兵隊の航空部隊のパッチを網羅。あわせて実際のクルーの着用例の写真も多数掲載。それぞれのパッチの解説も添えた、アメリカ海軍航空パッチの参考書だ。