記憶喪失ものって、良くも悪くも出きった感があって…あまり新鮮味はないのかなと思っていました。そうは言ってもこちらも分かった上でホロリとしたくて読んでいるので、ホロリ以上の過剰な期待はしていなかったのですが、予想以上に良かったです。好きな
人が記憶喪失になってしまって、戸惑い困惑しながらも相手の為に健気に頑張る…だけでなく、自分の気持ちや過去を整理して記憶が戻った時には本来あるべき姿で相手と向き合う…その様子が丁寧に掘り下げられていて(恋愛をテーマにした話としては)読み応えがありました。記憶をなくした朝倉×椎名と本来の朝倉×椎名とで、パラドックスめいた切ない心情描写も素晴らしかったです。「愛されたい」と望んで恋人だと嘘までついたのに、いざ愛されていると実感できる状況になったら、何故か思い浮かぶのは記憶を失う前の朝倉だった。朝倉の記憶が戻ったら戻ったで、記憶がなかった時に味わった愛されているという実感を求めてしまう。朝倉側の心情も椎名程ではないけどしっかり書かれていて分かりやすかったです。どこまでも平行線かと思っていた2人が、ゆっくりと近づいていく穏やかなラブストーリーです。
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