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「日本近代書道の父」と称される日下部鳴鶴の流れをくむ鳴鶴流第四代を継ぐ書家の著作。「字書きは文字学者でなければならない」という師匠の教えに従い、漢字の成り立ちなどについても研鑽を積み、それをまとめたのが、この一冊だ。 章立てがユニーク。「歩く文字、走る文字」「鷲づかみにされた心」「漢字でない漢字」「誠の花を学ぶ」「点は一生」の5章からなる。表意文字である漢字の意味や文字の誕生や変遷をたどり、漢字の魅力や書への思いや書聖、王羲之についても筆を進める。 書家の文字エッセーといった趣。「○(まる)」は三画で意味は四角であるなど、日ごろ接しているものだけに、改めて親しみが湧いてくる。だが、それだけではない。書の修行では「横棒三年、縦棒十年、点は一生」という。「先生になるにはその上にきちんとしたまるが書けなければならない」と、「○」の難しさも強調する。 文字と人間のかかわりは深く、歴史的にはたくさんの言語や文字が発生しては時代とともに消滅したり、大きく変化してきた。そうした中で、漢字だけが生き長らえているのは、漢字が表意文字であるという強みを持ち、書体は変わりながらも本質的には意味が変わらなかったことが大きいという。 それゆえに、中国では何千年も前の詩や文献を現代でも同じように読むことができ、それが古典的教養となって根付いている。漢字には、何千年と受け継がれてきた人類の知恵が秘められているということなのだ。「意味を持つこと」が漢字の命であるという著者の指摘は新鮮に響く。読みやすく、手軽な漢字の入門書といえ、「漢字が嫌いだ」という人でも楽しく読める。
9784620315140
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