第二次世界大戦の空襲のさなか、防空壕の中で子どもに読んで聞かせる昔話の絵本をもとに、世相と人間を風刺した短編集です。三鷹と疎開先の甲府で書き上げられ、終戦直後の1945年10月に筑摩書房から書下ろし小説として刊行(初版7500部)されました。「前書き」に続き、周囲に理解されない無用者の老人の孤独を描く「瘤取り」、幻想的な海底描写が秀逸な「浦島さん」、ナルシストの処女と彼女に惹かれる醜い中年男の悲劇を描く「カチカチ山」、嫉妬深い悪妻に悩まされながら少女にほのかな恋心を覚える中年男の夢を描く「舌切雀」を収録。『お伽草紙』(筑摩書房、1945年10月25日発行)を底本に、巻頭に「ミニ解説」(北條一浩)を付けています。2010年の常用漢字改定に照らし合わせ、人名を含め現代仮名遣いへ改めるとともに、常用外漢字にはルビを振り読みやすくした縦書版電子書籍です。
目次:
前書き
瘤取り
浦島さん
カチカチ山
舌切雀
著者・解説者紹介
著者について:
1909年6月、青森県北津軽郡金木村(現五所川原市)生まれ。本名、津島修治。東京帝国大学仏文科中退。1935年「逆行」が第一回芥川賞候補になる。1936年第一創作集『晩年』刊行。以後、「女生徒」「斜陽」「人間失格」等著作多数。1948年6月没。