このレビューはネタバレを含みます▼
今から百年以上前に発表された小説でありながら、現代の我々にもそのリアリティーを十分に強く感じられそうな印象を受けました。ヒロインである宮が、結婚するはずだった貫一と離れて別の裕福な男性と結ばれたことを考えると、貫一が怒るのも無理はないと思いましたし、その後の熱海海岸のでのシーンを見れば、彼の立場ならきっと胸がスカッとするかもしれません。描かれている愛憎や損得重視の感情、さらには道理や正・不正の判断など、人間の様々な考え方がよく展開されており、作者尾崎紅葉のセンスが光っていると思います。