コミカライズの立ち読みで「乱歩がBLっぽいものを書いてたの?」と気になって、せっかくなので原文で読みました。書かれた時代を考えれば仕方ないとはいえ、同性愛は「おぞましくも哀れな変態(だが猟奇小説的にはそこが良い)」みたいな扱いです。現代のセ
クシャリティ観からすれば、完全にアウトだし、主人公の同性愛に対する理解/受容は皆無なので、レトロ耽美BLを求める人は満足できないと思います。ただ、主人公に想いを寄せるキャラクターは、一途だし、頭も良い、品のある青年で、私は好きです。こんなに地の文にも主人公にも無意識な差別を向けられているのに、それでも魅力的ってある意味すごいな……。
同性愛以外にも、前時代的な"何の悪気もない"蔑視を向けられているマイノリティがあり、それがストーリーの根幹にもなっているので、全体的に、現代の表現だったらアウトです。よって、現代人としては「面白い」と言ってしまうのに躊躇はあるのですが、中盤で明らかになる下手人やトリックの悪趣味さや、クライマックスの妙なエログロ感の乱歩っぽさが好きな人は、楽しめてしまうと思います。ストーリーもサクサク進んで飽きさせず、"現代としてはアウト"な表現がもう少し控えめだったら、もっと有名な作品になっていたんだろうなぁと想像してしまいました。
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