知らずにロレイン・ヒース作を二作目。気づいた理由は、設定上の共通点の多さ。訳者が異なるから日本語はまるで別人の仕立て。実は、既読の「氷の紳士に拾われた家政婦」の作風が気に入っていたから、半分ほどノンストップで読み進んでから、たまらず一旦確か
めに閉じたとき、引き裂かれたような感じがあった。「路地裏の伯爵令嬢」は、良くも悪くも、技巧に走らないようにしている様な言葉遣いに思える。使用されている言葉で他の余白を持たせずに全て伝えに来る。一方、氷の紳士ーのほうは、明らか、そこに漂うものを感覚的に判れ、といわれているように、見えないところを見るかのように補って読め、といわれている気がするのだ。
ストーリーには、なぜそんなことが出来る?、そこへ果たして行けるものかな、そこまで長期でバレない筈はない、いやいや現実無理、ってことだらけなので、ハーレクイン様式と思って、楽しむためには粛々と受け入れるしかない。
「貴族」「貴族外の社会に居る男性」「賭博場」「秘められたこと」「のんきなお兄さん」と、似すぎる両ストーリーで、展開の時間進行だけ物凄く違う。本作は、時系列に沿って展開しない工夫だけでは、少しインパクトが弱いと感じた。
どんな話か、ということでは、メイン二人の間の数々の出来事が物語の方向を引っ張るのはいかにも小説を読んでいる風なのだが、語りの世界への迷い込みはなくて、次に起こることに付き合っていくことで結末まで来る。
義理の兄って妹の結婚相手(88%)?、とかの些末な違和感は別にしても、クラブへのこだわりが中途半端に尻つぼみになったこと、など、あれあれ?、というのも心残り。ヒロインの家族関係も揺らぎがあるように感じてる。
トゥルーラブ家もめちゃくちゃご都合主義に扱われてる。公爵が異常に高密度分布してる。お金を稼ぐことが割と厳しくない表され方。ギャンブル依存症の借金まみれで身を持ち崩した人間や、セ×クス依存症による庶子大量発生の根本解決もそっちのけ。
数十年前の漫画等にありふれた、子どもにとって家族とは、という手垢の付いているテーマが、極めて古典的に捌かれてしまっている。そこは確かに涙物で、私もヒロインへの感情移入でハンカチ探しに中断したのだが。
二人が、初めてを初めて同士で、という状況萌えは大きかったが、ベッドシーン全般ロマンチックと思えなかった。
3.5のつもりで。
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