「まさか、俺がなあ……」
鏡に映る俺――女の子は、深く溜息を吐いていた。
性転換病、百万人に一人が感染するという病によって、
俺は男から女へと変わってしまった。
男に戻ることは二度とない。
しばらくの入院の後に我が家へ帰ってきたところ、声を掛けられた。
「お兄……ちゃん?」
声が聞こえた方へ向くと、見慣れた子が立っていた。
不思議そうな表情をこちらに向けている。
……無理もない。
「……おう、剛か」
その子は近所に住む山吹剛という、昔から世話をしていた子だ。
元の姿とはかけ離れているが、俺が性転換病に罹ったことは知らされていたのだろう。
「心配してくれてありがとうな。こうなっちまったけど身体には異常ないし大丈夫だ。……これからもよろしくな」
「う、うん。分かったよお兄ちゃん」
ぎこちないながらもそう返事してくれた剛。
俺はこれからも変わらず世話してやろう。
――そう思っていた。
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