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本来くすりとはどういうものであり、治療をうけるとはどういうことであるかを正しく理解していることは誰にとっても必要なことだと考えます。いいかえると、科学としての現代医学をささえている論理の仕組と人間、このとらえがたきものに医学的に接近するための方法についての一応の知識をもっていることが、現代人としての資格の一つではないかと考えます。
この本はもともとこのような考えにもとづいたものですから、できるだけやさしく書くことにつとめましたが、いくらか理屈っぼくなったのはやむをえないこととお許しをねがうしかありません。発刊以来比較的多くの人々によまれたことは幸いでありましたが、日本のくすりの世界の状況が今日なお大して改善されたようでもありません。したがってこのささやかな本の使命がまだ終わっていないようにも思われます。(「UP選書への序」より)
目次
UP選書への序
はしがき
一 日本のくすり、くすりの日本
二 きくくすり、きかないくすり
三 くすりの副作用
四 動物実験の役割/1 動物実験の重要さ/2 動物と人間のちがい/3 動物から人間へ
五 治療の現状
六 経験医学から実験医学へ
七 権威主義と商業主義
八 それがあとからおこったから
九 比較実験へのこころみ
一〇 結核治療の歴史から
一一 ストンプトマイシン事始め
一二 イギリスでの研究――MRCの業績
一三 アメリカでの努カ――VAその他の業績
一四 医者のたよりなさ
一五 患者のたよりなさ
一六 にせぐすりの薬理学/1 にせぐすり/2 にせぐすり反応/3 にせぐすり反応者/4 めくら試験
一七 ききめを左右するもの/1 病名・診断/2 病気の重さ・病型/3 年齢・性/4 個体差/5 人種差/6 その他の条件/7 いろいろな条件の評価
一八 ききめの評価の方法/1 臨床実験の三条件/2 いろいろな比較法/3 比較試験の実例/4 国療化研の成績から
一九 臨床実験の条件/1 実験の感度/2 人間の側の条件/3 くすりの量・飲み方・治療の期間/4 脱落
二〇 くすりが世に出るまで/1 研究の諸段階 2 健康人における試験/3 患者における「準備試験」4 本格的な臨床実験/5 売り出されてからの追及
二一 人体実験の倫理
二二 臨床医学の現状をこえるために
参考文献
索引