「婚約を破棄致します」
王宮にある庭園の東屋で、フローラは婚約者に婚約破棄を告げる。
ほんの二週間前、「婚約破棄してみようかしら」などと口にしたのは、退屈しのぎのほんの戯れだったはずなのに――。
末っ子の第四王女フローラは、お菓子と恋愛小説が大好きな十五歳。幼い頃からの婚約者である公爵家の嫡男ユリウスを、兄のように慕っている。
婚約は穏やかに結婚まで続いていくはずだった。けれど、ユリウスが外交先の留学を終え、美しい令嬢を伴って帰国したその日から、フローラを取り巻く世界は変わってしまったのだった――。
これは、恋を知らない王女と不器用な婚約者の、初めての恋のお話。
書き下ろしでは、フローラ達のその後を描いたほのぼの後日談、念願のクッキー作りに挑戦することになったフローラを追加。