本書は、「ロボット・コンテスト」の生みの親であり、仏教研究者としても高名な東京工業大学名誉教授の森政弘氏に近しく薫陶を受けた教え子や、知遇を得た人々への取材を通し、森氏がもつ人間力と創造力に迫った一冊です。
研究者としてはロボット工学の世界をけん引し、また教育者として創造性開発のためのユニークな手法で多くの人を育ててきた森氏。東京工業大学で森氏に学んだ学生、森氏が設立したシンクタンク「自在研究所」で知遇を得た方など11人が、森氏との鮮烈な思い出とともに、創造の営みから人間の生き方にまで通じる普遍的な智慧の学びを語っています。
森氏の過去の著作や論文、また森氏本人への取材から得られた情報も盛り込み、時代や分野を超えて発揮される森氏の人間力と創造力を明らかにしているのも本書の特徴です。 新興分野だった機械工学の先駆者でありながら、工業デザイナーの榮久庵憲司氏や建築家の池邊陽氏などと親交をもち、異分野から学ぶことで感性を鍛えてこられた森先生ですが、本書では、ものづくりに夢中だった少年期を経て工学者となり、やがて仏教の世界に足を踏み入れる至った経緯など、ものづくりと教育に捧げてきた森氏の半生についても丁寧に記述しています。
このほか、ヒューマノイドロボットの業界にいまなお多大な影響を与えている「不気味の谷」理論や、ロボコンの源流である東工業大の「乾電池コンテスト」の様子など、ロボット博士・森政弘のものづくり哲学の真髄に迫っています。