家庭の事情でピアニストになる夢をあきらめた田村青葉は、子どもに音楽の楽しさを伝えたいと思い、『くすのき幼稚園』で先生をしている。
ある日、園児が帰った後のハーモニールームから聞き慣れない美しいピアノの旋律が聞こえ、覗いてみると、驚くほど顔の整った男性がピアノを奏でていた。一度聞いた曲は忘れない青葉は頭の中でピアノの音を音階に置き換えて、帰宅後も何度もリフレインするのだった。園長の話によると、ピアノの奏者は園長の甥で、帝都音楽大学の作曲科准教授、久遠樹だという。彼が弾いていた曲は彼の亡き父が息子のために作曲した曲ではないかということだった。
青葉は、不定期で『街角ピアニスト・アオ』としてピンクのウイッグを被り路上演奏をしていた。
ある日、「アオ」として駅のカラフルなピアノであの曲を演奏していた。
「どうしてこの曲を知っているんだ!?」
鋭い声にハタと我に返ると、そこにはあの日ハーモニールームで見た久遠樹が険しい顔をして立っていた。彼は勝手に演奏されたことに怒りながらも、「アオ」のピアノに魅了されていき――。
音楽界を舞台にした、住む世界が違い過ぎる二人の甘いラブストーリー。