どうしていなくなっちゃったの?
哀しみを抱えきれなくなったらそっと開いてほしい本です
獣医師が明かすペットと飼い主が紡ぐ9つの物語と公認心理師が伝える再び歩き出すためのヒント
「もう二度と動物たちと暮らしたくない」
飼い主さんからのこの言葉を聞くとき、獣医師として無力感を覚えたものです。
動物病院では様々な感情が行き交います。
「うちの子、この間こんなことしたんですよ!」
爪切りやワクチン接種などで動物病院を訪れる飼い主さんは、我が子のほほ笑ましいエピソードをお話になります。
飼い主さんのお顔はニコニコです。
一方で、病を抱え、お別れが近くなった飼い主さんは、「この子がいなくなったらどうしよう……」と不安を口にされることも少なくありません。
人と動物との関係をあらゆる角度から学び、どんな状態の中でも、できる限り動物たちと飼い主さんにしあわせな時間を過ごしてほしいという想いで診療にたずさわってきましたが、愛する子を看取るまでの苦悩、そして、死別の哀しみは簡単に癒えるものではありません。
どのような気持ちを抱えてもおかしくはなく、また、どのような気持ちであっても受け止めてくれるつながりが必要になります。
「うちの子になってくれてありがとう」
「ともに過ごした日々はしあわせだった」
そして
「また動物たちと暮らしたい」
目の前の飼い主さんにいつか、そう思える日がきてほしい。
その想いでたどり着いたのが、グリーフケアという取り組みです。
グリーフとは喪失体験をした際の「悲嘆反応」のこと。
ペットロスは大切な存在である動物たちを失って抱えるグリーフです。
亡くなったペットたちは、飼い主とまた会えるのを待ち、再会した飼い主とともに虹の橋を渡るといわれることがあります。
私が伺ったお話は、そんなペットたちが教えてくれる大切なエピソードばかりでした。
誰もが避けることのできない死別。
ペットロスの哀しみの中にある方や、ペットたちと生活していらっしゃる皆さんに知っておいていただきたいことをこの一冊に込めました。
人生は哀しみで終わらない。
そのことを信じ、ページをめくっていただければ幸いです。
(「はじめに」より抜粋)