「お前をおいては逝かない。俺が死ぬ前に、お前を殺して連れていってやる」成人の誕生日、王女マルーンは密かに想い合う騎士レヴェッシュと身体を重ね、快楽の中で夫婦の誓いを交わした。けれどその翌朝から、彼は忽然と姿を消す。――彼女は知らなかった。自分が王太子の兄の政敵であり、側妃の母と祖父に操られていることを。そして七年後、彼女は隣国への遊学中に人攫いに遭い、馬車でどこかへ連れ去られていた。『自分は祖国から愛されている』……そう信じていた世界が、崩れてゆく中。傍に寄り添ったのは、男のように凛とした一人の侍女。――名は“レヴ”。その瞳はかつて彼女を貫いた、熱く、激しく、狂おしい恋人と同じ色をしていた。