本書で扱う「デジタル時代のマーケティング」とは、例えばSEOや検索連動型広告、SNS運用といった施策の話に閉じられた内容ではありません。
もちろんそれらも重要な要素ではありますが、本書で焦点を定めるのは、「デジタルの活用」が広がったことによって、生活者の意思決定プロセスや購買行動がどのように変わり、それに対してマーケティングの考え方や前提がどう進化すべきかという点にあります。
デジタル技術の発展によって、生活者の行動は詳細にデータとして捉えられるようになりました。どの施策がどのように作用したのかを、仮説と検証のサイクルを通じて明らかにすることができるようになったのです。これはまさに「マーケティングの科学化」といえるでしょう。
この変化を理解する上で、本書では「定跡(じょうせき)」という将棋の概念を一つの比喩として用いています。
将棋における定跡とは、最善手を追求する中で長年にわたり蓄積された「勝つための型」のようなものです。
しかし近年、この定跡に大きな変化が起きました。言うまでもなく、その背景にはAI(人工知能)の登場があります。
本書では、“変化し続ける定跡”の時代におけるマーケティングの考え方と、その裏付けとなる科学的手法を、実例や理論を交えて解説していきます。
読者の皆さまには、これからの時代に適応するための視座を養っていただくとともに、自らのビジネスにおいて“新しい定跡”を見つける手がかりとして活用していただければ幸いです。
マーケティングの担当者だけではなく、会社の経営者や今後経営に携わる方にも役立つ一冊です。