すべての物事に境界線がある。
日なたと陰。
友情と恋愛。
選ばれた彼氏と、そうでない俺――
好きな人には恋人がいる、先生が好き、恋愛禁止を守れないアイドル、
成立しない男女の友情、年の差の恋……
SNSで若者から支持を集める著者が、恋愛に正しい・正しくないはあるのかを問う、
切なくて、痛い、不器用な8つのラブストーリー
その立ち位置は俺じゃダメなんですか?
何度も口にしかけたことのある禁句が、缶をあおれば容易く喉の下へと消える。
事情に踏み込みすぎないことで、彼女の一歩後ろのこの場所を、なんとか俺は守ることができている。
彼女は、居酒屋にいても、狭い部屋の中に居ても、好きな人の名前を出した。
どこにいても、好きな人の存在があった。彼女の遠い視線は、新宿を向いていた。
それでも、機会を待っていた。男とけんかをしたと聞くたびに心が躍った。
彼女の肢体を抱きしめているときは、たしかに彼女は俺のものになった。
あの時間だけは、正真正銘、二人の間には誰も入れないはずだった。
――本文より