男性がかっこよく、女性がチャーミング、1頁目から直ぐに絵で世界に引き込まれる。藤田先生は、私の好きなタイプの絵を、クラシカルなドレスなどの風俗から、現代ファッションまで見せてくれる、ハーレクインコミックオールラウンダー十傑的な存在のお一人に
思っている。ストーリー面の手腕も備えた作家として、私は橋本 藍( orもと) 村田 さちみ 小林 佐柄 尾方 荻丸 津谷 の諸先生方と共に十指に入れている。但し男性のビジュアルに焦点を当てるとガラリと変わる。半分位は顔ぶれが違う。
藤田先生は、女性も男性もいい。また雰囲気がある。メイン二人がロマンチック。その話の舞台の空気を感じさせられて、物語世界に自分を運んでくれる。
「背徳のキス」は、その上、舞台の南東欧を信じこませる。デメトリオスがヒロインのことが気になってたまらない感じ、ヒロインが彼を意識してしまい頑張って警戒する感じ、伝わってくる。5星。
「シンデレラに靴を」では、見も知らぬ女性に、出来る範囲の親切をする彼が、その甘くて優しいマスクに似合わず、頼もしい。危険に対して正にヒーロー。ロマンスだけでなくサスペンス描写も藤田先生が巧みであることを再認識する作品。4星。
「ホテル・インフェルノ」は、不思議な能力を持っているレイントリー一族のお話の第一作目。カラーが美しい(私は全頁カラー化は希望しない人間)。超能力者の話は大好きだが、HQコミックでは少ない。その珍しいジャンル、先生は仰々しく演出せずちょっと発火だけ描くさりげなさが逆に神秘性を匂わせて、読み手としては、ストーリーの先へのワクワク感を貯めていく。はぐれサイキックのヒロインは、段々凄みを増す王ダンテの力を見せつけられて行くのだが、大惨事の火事シーンはそこそこスケールがあり、徐々にストーリー展開力が強まって話への興味の繋ぎ方うまく乗せられる。ローナとダンテが互いの能力を認識するところ、「蒼の封印」(篠原千絵)をなんとなく思い出す。探り合いの、そういう緊張感の煽り方が巧みだと思う。
但しシリーズは4巻あり、後を引くため、これっきりでは済まなくなる可能性がある。一ヶ所「ひえっ」という絵が私には「ひえっ」な気分に陥った。5星。
個別に読んだ。
2021/4/17追記 :今知りましたが、先生は平成3年度(1992年)に第37回小学館漫画賞を受賞されていたのですね。歴代受賞者の顔ぶれを見ても、相当実力者であるとわかります。
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