「伯爵の無慈悲な選択」から読んでこちらに来た。あちらからだとカーラのほうはなぜ二人にそこまで出てくるかの訳が知れて、やけっぱちの当てつけ結婚にすがり付く心情がわかる。
この順番で良かったと思った。
怒りで頭が一杯の人は、相手の事
情お構い無しがほとんど。相手の言い分に耳を傾けることは大切。
でも、できない人のほうが多い。主張だけ一方的にして自分のことには仕方の無い事情があったと、なのに、相手には自分の視点から断罪。
何処にでもあるそんな光景への、一種の警鐘と見た。
ヴィトはカッコかわいい藤田男子。愛を取り戻そうと我が身可愛さをかなぐり捨てて彼女を追った。どうして言ってくれなかった?、これはオイオイ事情見てよ、と言いたいところだが、子どもを不幸にしたくない気持ちが正に彼が情にあついことを示すもの。また、なじった自分に会いに来て話すのはさぞ勇気が要ったことだろうと、冷静に帰れば察しの良いのも、相手目線を持っている証拠。二作目のカーラの彼より、エロイーズの彼、ヴィトのほうが私は好みだなと思った。若さゆえ早くから固まらずに一見ふらついて見えるが、これもしなやかな思考の持ち主と思える。
ヒロインはキャラ的にありがちな風情だが、その母親が豪快な人。HQでさんざんヒロインの相手役を張ってきたようなポジション。
ただ、この流れ、買い向かった資金は預かった運用資産(AUM)だろう、いいのか? と思った。
逆転的な彼女の素性種明かしは、メイン二人に余り金銭的苦労をさせないHQの傾向から、仕方の無い甘さではあるが、結婚式できびすを返した彼の潔さ(カーラにも罪悪感を持たせて彼の罪を軽減させる措置を仕組んであるが)には曇りも。愛情に真っ直ぐな姿勢の純粋さを減じたように、感じてしまう。
序盤のローマでの二人を描写した頁は、映画「眺めのいい部屋」(映画の舞台はフィレンツェだけど)を思い出してしまった。
藤田先生は恋人同士の絵にぎこちなさがなくてとても良い。
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