主人公は女性側ですが、これは男性時点の視点の方がHQ的なシチュエーションに見えます。ヒロインが出現して人生に薔薇色が差してきて、伴侶となることで更に確かな未来を形作る。彼はヒロインとの出会いの幸運により、背を向けていた人間やコミュニティへの
不信感を取り除いて行くことになりました。踏み込むことのなかった世界に、ヒロインと一緒に入って自分の人生を新展開出来ました。
人の噂というものの根拠なく広まる無責任な性質により、真実は押しやられていたわけですが、そこに対する読者としての悔しさは、和解(?)シーンはあるものの、どうしてもわだかまりが残っています。
罪なき人間を安易に傷つけることで憂さ晴らししていたとしか見えない、これまでの町の人たちからの冷たい態度を見せつけられて、私のもやもやは相当溜まった為に、簡単に解消されなかったのです。
78頁の、ヒロインの返答は、誘いかけに対する返答、そのひとつ前のコマは、必ずしも誘いかけのような体裁の台詞ではないと思います。そうとることのできる台詞でもありますが、そんな暗喩を匂わされた描写とは言えません。二人の関係の好転がスピードを持ち始めたところなので、このやり取りで頁めくりすると、エンスト気分ですので、ここにはもう少し双方のやり取りに、ストップならストップの、ゴーならゴーの、関連付けをもっと与えて欲しかったように思います。読者的には宙ぶらりん気分となりました。
絵が可愛らしく無難ですが、夫の年齢から見て少々少年っぽすぎたことは、責任感の強い借金返済のためにずっと頑張っている男性としてのたくましさの表現には妨げだった気がしています。ストーリー進行に直接の関係がないためか、端折られた、子供たちの実母の養育の意思の放棄が決定的になったところの子供たち自身の反応、読者の立場では、知りたかったとの思いもあります。
物語進行のかなりを、彼をよく知る町の女性の手に委ねられているのは、物語構成として既に縛りがかかっていることなので、彼女の描かれ方こそが相当に重要だったのだと感じました。
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