俺とあいつの間に入らんとする何ものをも、俺は許さない。
ある秘密のせいで周囲に馴染めない萌が頼りにするのは、小さい頃から夢に出てくる『兄さま』だけ。大空襲でひとりきりになった寂しさに耐えかねた萌は父の残した遺言に背き、亡き母の実家から来た迎えの者に連れられて黒頭村へと向かう。そこが『鬼を祀る村』と言われていると知り慄くも、身内に会いたい一心で萌は桐生家の門をくぐり……出会ったのは、桐生家の当主・宗一だった。彼は萌を威圧するような目で睨み「帰れ」と言い放つ。萌は強い拒絶に落胆するが、宗一の姿を見るとなぜか狂おしい切なさを感じ……。
陰のある美貌の当主×寂しがりの無垢な少女、
因習に縛られながらも、さだめに抗う優しい鬼の純愛怪奇譚。