《本作は同人誌となります》
病院勤めの朱寿乃(すずの)は、ある日高校生の榴(りゅう)のリハビリを担当することになる。
患者とは一定の距離感をと決めていると告げても遠慮なくなつく榴に、朱寿乃は小さな弟を相手にしている時のような安らぎを感じていた。
朱寿乃の家庭は大家族で、下に弟と妹が6人いる7人兄弟。
両親は大喧嘩をするたびに“仲良し”行為によって希薄で粗雑な愛を繋ぎ留め、そのたびに子供が増える異様な家族事情を長女の朱寿乃は誰よりも近くで感じていた。
母親はすでに居ない。7人の子供を産んだ後、誰にも何も告げず、家族を捨てて出て行ってしまったのだ。
それ以来家族の中心となって母親代わりの人生を歩んでいた朱寿乃にとって、自分自身の幸せを考える事は難しかったはずが、 榴との出会いによりその価値観は少しづつ塗り替えられていく。
リハビリという名目で会う間柄、特定の環境下で生まれる錯覚、一回りも違う年の差……。
いくつもの理由を自分自身に言い聞かせ、この感情に蓋をした。蓋をするべきだと思った。
――好きになったらダメなのに…! 愛情と葛藤のドラマを描く『好きになったらダメ、なのに』シリーズ。
今作は無意識のうちに自ら課した抑制から抜け出そうとあがく、自己解放の物語。 自分の本心からの意見を口に出来た時、涙が溢れ、興奮で眠ることができなかった。
誰にも意見できず尽くす事でしか感じられなかった存在意義から脱却する、愛を知ることで得た朱寿乃の勇気と決心を描いたストーリーをお届けします。
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