日代琴葉は指の骨が一部欠けていた──
十数年ぶりに地元・星崎町へ戻ったOL・日代琴葉。
幼い頃の記憶が曖昧だった彼女は不意に交通事故に巻き込まれそうになったところを、自称Webライターの秋月秀に救われる。
命の恩人をお礼の食事誘った琴葉は、会話の中で地元に伝わる人の骨を抜く怪異”くちなー様”の噂を耳にし……
「そういえば私もこの指、骨がないんですよね~」
その瞬間、秋月の穏やかだった瞳が、冷たく深い闇に染まる。
「やっと見つけた。──もう、逃がさない」
秋月の正体は人間の姿に化けたくちなー様だった。
「ひどい人間だね 結婚するって、約束してたのに」
問いかける間もなく、彼の手が強引に身体をなぞる。
甘い声で囁かれながらも、約束など身に覚えのない琴葉は必死に抵抗する。
しかし秋月は苛立ちをにじませ、低く告げた。
「あー俺は本当にバカだなぁ 人間なんかに惚れ込むなんて」
「琴葉が思い出すまで嬲るね」
逃れられない神縁に、身体も心も沈んでいく──。