初めてかもしれない漫画家松苗先生、二本とも良かったのでこれから名前覚えます。手抜き感全くない背景にどの人物も一人一人の居場所が作られているように存在してました。話の運びも、短編とは思えないくらい深まりがあって、エピソードが心のなかに残って行
きます。
一本目、HQにたまに居るクリスマス嫌いのキャラクターと、対極のクリスマス観の持ち主との話。メグ・ライアンとトム・ハンクスの映画を彷彿とさせるラブコメディ。シンプルなストーリーなので感動を生むのは厳しいように思うのですが、ちゃんと要所に心情と賑わしさを挟んであり、持って行かれました。最後2頁は短編なので、勿体ない気もしますが、そのたっぷりラストシーンが、余韻の引っ張り効果もあるんですね。人物以外の描写にも細やかさを出していたので、二頁のドンドーンは説得されました。相当細部も描き込んでおり、一冊で一編の他のHQに比較して、これ一作で一体どれだけの労力がかかったのか!? 漫画になって良かったと、きっと命を吹き込まれたのでは、と思いました。マンガという形式の、デフォルメと写実の中間を行くポジションの、視覚にも訴えながら、そして、コマを鮮やかに切り取って断片を見せる、実写とも異なる方法だから表現できているものが沢山あり、まんがとして堪能できます。老婆心てものですが、上院議員を向こうに回した、ということにはならなかったのかが心配です。
二本目、初恋成就物が好きな私ですが、一方、後から思うと人生最大に見えてたあれは違ってたのか、こちらが本物なんだったんだな、というのも、幸せのあり方の様に感じて好きです。これは彼の胸中を思うにつけドラマの膨らみを感じますし、お隣一家の暖かさや賑わしさがアットホームで、短編なのにそこも人間ドラマの広がりを感じさせて、ひとこまひとこまの組み合わせ、構成の素晴らしさに、先生の高い技術力を感じました。
男性のビジュアルが全く私の好みではない、それだけが弱点ですが、気になりませんでした。
強いてあげれば二作目のマーカスは中身さえも私のタイプではないですが、ヒロインとの関係に於いてこの組み合わせでなってよかったと思わせる二人なので、自分の理想と違うからと評価が変わることはありません。
ヒロインにとって幸せ、彼にとっても幸せ、それを見届けるこちらも。その二人からハッピー気分をもらえれば充分です。
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