クリスマスホリデイに家族に会いに行く善男善女が雪に閉じ込められ偶然出会った。道路に程近い森の一軒家。
一宿一飯でいいからと暖を求めて厄介になった先の家の住人は無愛想で、如才なくあしらってやり過ごす世俗人タイプではない。その深い部分にある優
しさに触れ、彼の不器用ながらも愛すべき人柄を見抜くヒロインが積極的!道路復旧まで延びるうちに次第に心を寄せ合う臨時の同居人達。賑やかさを添えてほのぼの心温まるクリスマス。
さちみ先生はヘタレを描くとクライマックスの盛り上げがより際立つ技巧的作劇をする名手。ここぞというときは頑張る姿を見せて、よくもここまで彼女のために!、と感動一入となる。あそこまでアカデミック・バックグラウンドが凄ければ彼が敬遠するのも無理はないけれど。。。
また、登場人物の織り成すドラマも重層的で頁数以上に中身がある。
メインキャラ二人の心情描写はたっぷり取りながら、短期間の滞在中に起こる様々なエピソードも決して上っ面ではなく、よくも収まっているなと驚かされる。
ツリーを切り出したら、よくそんな切り出したばかりの重い樹木を入れる植木鉢が有るな、とか、バランスが取れるよう飾れるなんて、とか、外国映画にも抱く疑問がここでも。おもちゃでも飾ってツリーを綺麗に立たせておくのは工夫がいる。
ただ、クリスマスシーンは全員の清らかな気持ちを見させてもらって、心が洗われるとはこのこと!、と胸が詰まった。
私はさちみ先生が描かれる男性は横顔はそれほどじっくり眺めていようと思わないビジュアルなのだが、いつも、ストーリーテリングの巧みさで、少しも気にならなくなるのである。
凄いなぁとつくづく思う。
あとがきの4コマ二つ、ばらし過ぎかなと。それは、原作派ならば、読みに行くし、コミックスオンリー派なら、知らなくてもいいかと。
正直?、原作への敬意?、作家としての良心?、
引け目は要らないと思う。他の作品で、人物像への肉付けを明かしていたが、そんなお茶濁しで良いのでは。
クライマックスで大学を舞台にするとは大正解だとは思う。HQはといえば、会社トップの大邸宅や貴族の居城などを華麗に描くことは多くても、本作のように大学の建物はちょっと記憶にない。確かに、別にハーバード大に限らず、海外の大学は物凄く絵になることが多いので、そこをいいシーンに使っているさちみ先生のアイディアが素晴らしい。
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