正体不明の女 幼馴染み 敵対勢力の女、いずれも愛してしまえば関係ないこと。でも、一般人の恋でなくて一国の王子の身でも出来ることかと言えば、簡単ではない話になるだろう。
タイトル通り王子達が困難を乗り越えて皆「愛を貫く」ストーリー。
シリーズ中二作品は既に紙で読んでいたが、電子書籍で味わい直し感動を新たにした。HQっていいなぁ〜と浸れる。
HQは架空の小さな王国設定が多く、石を投げたら、同じくやたら居る富豪の数よりも確率高く王子様達当たりそう。
けれど、流血や戦場のシーンまで描写となると、記憶に残るものはこのシリーズくらい。王位継承には、権力闘争は確かにつきもので、平和な舞台が多いHQの一角にあってもいい。但し、描けない作家に無理はさせられない。さちみ先生は守備範囲が広い先生で確かな腕の持ち主、読んでいて、買うんじゃなかったと思わせない筆遣いで、必要なところには迫力が備わっている。
記憶に残る作品であるのは、中身がしっかり詰まっているゆえ。だからセットで再読することにしたわけだ。
さらっと読むことを好むコミック読者もいるらしいが、それだと、ただ離れたところでストーリーを眺めて通り過ぎることに終わってしまうため、私は反対に割と非日常体感気分を求めていて、中の世界に自分が入り込む気持ちになるくらいが好き。
虚構の世界に遊びに来て、あり得そうであり得ない、あり得ないのにリアルな夢を感じ取りたい。
コミックによる表現方法は、手っとり早くそれを楽しむツールなので、お伽噺であっても、御約束事も意識しつつの現実との微妙な接点のために、人物の思考回路や存在感が大切。
さちみ先生がご担当されると、HQが、そんな、夢とリアリティの難しいバランスを取って、どの作品でも感情の表現・動きに共感させられる展開が巧みに差し込まれ、虚構なのに、居合わせられ信じこませる様なお力が強い。説得力というか。よく推敲(?)された展開力というか。コミックのビジュアル性と、絞り込まれたカットの割り方のドラマ構築力とが、このページ数にして時間も空間も拡がりを与えてくれている。
まとめて読む機会を得て良かった。
3冊纏めてでないと、一気読みの気持ちよさはなかったことだろう。
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