ストーリーも絵も、スケールがあり、時代性を信じさせる説明力を伴った、ミステリー仕立てのロードムービー的作品。お定まりの、ヒロインが女性だったと知る流れ、少々ビフォア・アフターがあざといが、ヒロインの抱える事情や生い立ちなどが、少年のなりをし
なければならなかった理由以上に、話にディ・バラのシリーズの女性像との流れも絡んで、興味を繋げる。
謎は、ふたを開けてみれば、貰い事故の出発点なりの決着の取り方で、却ってヒロイン兄妹を長年苦しめた「敵」がこの一件によって片付いてくれて、好都合な屈折点となる。
寧ろ、彼が隠していた謎の方が、二人には大きかった。
「主人公は死なず」、のストーリーの一大鉄則が、ロマンス・ストーリーではヒロインの相手にも適用されるので、ここではしかし、大きなクライマックスにはなれなかった。助かるんでしょ?、きっと助かるよね?、と思って読むからだ。
それでも、隠すことなく愛を伝えることのできる機会に、こしかたを思い返して読者的には、そこまでやっと来た二人に感じるところがある。
大男がいかにして物語最後のカードを、ニコラスサイドの内部にこっそり置けたのか、最大の謎が判然とせず消化不良。
しかし、シリーズの中でも、面白い所を拾った内容で楽しめた。一件落着後の最終場面に、それまでのヒロインのキャラとは違和感を覚える構成で兄嫁達との交流が描かれた感がして、そこは彼女ならではの図が欲しかった気はする。
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