こういう話を本当に読んだことがなかったのか、初めてに思えない。ちょっと怖くて不思議な話が昔話には沢山あって、まさに民話の世界そのものに誘われた気がしてならない。
母、母を語る偽物、人間以外も次々登場と、寂しさの漂うトーンの母恋しの物語
は、母探しの最中にその思慕の情につけこまれて危険な目に何度も遭う。平安期設定の時代物?
絵はシンプルに何を描いているか最小限度の描写で解らせる線描画の趣き。侘しい廃屋とかにピッタリするが、化け物のシーンや襲われたときの被害描写が逆に、妙にその素朴さが多くを語ってくるようで、細かくないことが寧ろ生々しさを駆り立てた。
大うなぎ、結局これが物語で一定の役割果たす他は、この世の人ならざる者のおどろおどろしさで話が組み立てられている。その者らに出会わせ怖がらせて、主人公蓮王丸を追いたてるように旅をさせる。
見守る母の、蓮王丸に対するもどかしくも切ない想い、行動にハラハラしながらも付き添い守りきりたい気持ち、これが母視点で捉えて私にはこたえてしまった。
こどもサイドで読むことは出来なかった。
どれだけ心残りだったか、だからこそのストーリーだ。
もっとも、それをいうなら、その心残りが化体した砦の怪物の造形が甚だしく恐ろしく気味悪く、でもそれだけ想いの強さ激しさを物語り、想像される残された者達の不憫さは際立ち、その後の幸せを思わずにはいられない。山賊にでも成り果ててしまうのだろうか。
咀嚼するにはあまりに硬い、ストーリーに用意された各エピソードのバックグラウンドむき出しのままで私は読み過ごしてきており、なんとなく私には伝わり方がはっきりしなかったところがある。とても申し訳ないが4.0未満のつもりの4星で。
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