状況を説明するにあたってその言葉を発するのは物語の主軸である主人公または、それに付随する登場人物の誰かであるはずなのに、どれでもない語りがある。まあ作り方としては色々あってよいので悪いわけではないが、一貫していないところが気持ち悪い。主人公
のアンジェラは世話になったサルド家の娘で親友マヤからの依頼を受け、マヤの兄リックの看護師としてバヤルター島に赴く。予めリックはかなりの危機的状況であると説明されているが物語の中に焦燥感はない。それどころか「頭の中の破片」について中盤以降エンディングまで触れられておらず、明日をも知れぬー、というくだりは忘れ去られているかのようだ。あっという間にリックは通常生活に馴染み、サルド兄弟の間で翻弄されるアンジェラの話に主軸を置くという物語の展開には疑問点が数々浮上、名家の跡取り問題、長男の処遇、次男の進退他にも答えは出されてはいない。エンディングに至っては目の見えないリックが突然走り出し樹に顔面から衝突しアンジェラを呼ぶ。ここは衝撃なシーンだけれど、説得力に欠けてしまって涙も出ない。
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