先生の作品は『夜間飛行』と『疵と蜜』の二作を読んで、とても波長が合ったのでこちらも購入してみました。力のある作家さんになると、ストーリー展開や伏線の張り方が実に見事で、読者は特に伏線の回収作業が楽しいんですけど、遠野先生の場合は、伏線の張り
方が個性的だなと思います。【伏線】と言っても、人によって文字通り「伏せておく」(後から見返してみれば既出であっても、その場では気づかない)作家さんもいれば、本来の使い方としての「仄めかしておく」程度にする作家さんもいるし、その両方と更に大小織り混ぜる作家さんもいて色々ですよね。私が「伏せておく」作家さんの作品を読むことが多いので遠野先生の伏線の張り方を個性的と思うのかもしれませんが、あらかじめ「仄めかされている」伏線を自分で回収する作業が楽しかったです。料理に例えると、一流シェフの作る料理を「目の前で見せてもらう」のと「一緒に作る」の違いで、どちらも面白いですし、食べても間違いなく美味しいです。でも「一緒に作る」方が楽しい気がします。そういう意味で先生の作品は、読者参加型の伏線回収で面白いなと思います。脇の周や加納ら周辺は分かり始めてきたけど、主役の高月・葉についてはまだまだなので次巻が楽しみです。
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