この小説は、2010年に発行されている。
アルコール依存症の問題はこの頃に既にあったし、人類の歴史と切っても切り離せない問題だろうと思う。
全体として、この小説は良く練られていて映像の世界を興味深く読めた。
しかし、水原英之の人物設定
で煙草を吸っているのは彼に似合わない。煙草を吸っていると、服だけでなく身体からも不快な臭いがする。口づけの相手も不快にしてしまう。もう煙草を吸う行為は格好が良いと言えるものではない。寧ろ吸う人の人間性にも言及されるほどのものだ。同じ部屋にいる笹塚遼の美貌と健康が損なわれる。英之は魅力的な人物なのに、煙草が介在することで魅力が半減してしまう。
私は、漫画家のイラストがあまり好きではない。挿絵の英之は美男には見えないし、遼も美人に見えない。けれども、人によって美的感覚は違うので、宝井理人先生の絵が好きな人も多いのは承知している。
読んでいて涙が出るほど良かったのに、煙草と挿絵故に、手元に置いておきたい本でなくなったのが、つくづく残念だ。
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