2009年のアラブの春以降、アラブ諸国は国や地域による違いを増幅させながら、その後も大小さまざまな事件がおき、いろいろな動きを見せている。
本書は、中東アラブ研究では第1人者である著者らが、アラブの春およびエジプト革命前後に行ったエジプトにおける数度の世論調査の結果をふまえて、
エジプト国民の意識の変化とエジプト国内の政治的・経済的活動の展開を分析する。
そのうえで今後のエジプト社会の展望、さらにアラブ社会が今後どのような展開を見せるのかについての展望を描く。
アラブ社会では珍しい世論調査の結果から分析した本書は、どうしても歴史的、宗教的、文化的視点に偏りがちな
日本のアラブ研究に統計的手法という社会科学的手法を持ちこむという意味でも大胆な試みとなる。
短期的にもさまざまな事件が絶えないアラブ社会だが、民意の変化の分析をとおして、短期的側面だけではなく、
長期的な視点から考えた現代アラブ社会論となっている。
【主な内容】
第1部「アラブの春」とアラブ社会
第1章 アラブの政治地図
第2章グローバル化とアラブ世界
第3章 独裁体制の制度疲労
第4章 「アラブの春」と近代性
第2部 エジプト革命の社会経済構造
第5章 変容するエジプト社会経済
第6章 エジプト社会の構造的脆弱性
第7章 若者とエジプト革命
第8章 地方とエジプト革命
第3部 エジプト革命とエジプト社会――意識調査分析
第9章 エジプト革命と意識調査
第10章 革命前後におけるエジプト国民の意識変化
第11章 エジプト国民の意識構造と投票行動
第12章 革命の行方
おわりに 「アラブの春」とは何であったのか、また何でありうるのか