このレビューはネタバレを含みます▼
主人公の感情のねじれが、特に酒場でさくらんぼを食べる姿の描写によって深く表現されている作品だと思いました。彼自身、一人の夫かつ三人の子供の父であるという、責任を持たなければならない存在であることをうっすらと自覚している様子が感じられます。一方で、それにも関わらずいつも遊びに逃げてしまう自分に対する罪悪感は、様々な比喩表現から感じることができます。子供も親も大事な存在であるがゆえに即時に答えを出せないような深い悩みも、さらりと話の中に描き出す、作者太宰治のセンスが生かされていると思いました。