鬼才・楠田文人が描く、どこかおかしくて、ちょっと不思議な世界へようこそ。15分間の現実逃避をお楽しみください。 「えらい立派な木魂の木があるっちゅうて、人から聞いたんですけどな、お宅の木を、譲って頂けませんかね?」 「馬鹿もん! 木魂の木を何だと思っとるんだ! 売り先で丁寧に扱ってもらえる保証がないのに売る訳にはいかん。帰れ! さあ帰れ!」 植木商が高値をつけても、主人は決してその木を手放さなかった。 秋近くなると、その木は可憐な白い花を咲かせる。昼近く、気温が上がり実も暖まった頃になると、最初の実が弾け、中から人魂にも似た白い幽霊が生まれ、ふわふわと空中に漂いだす…。