月村先生の作品は大好きなのに、いくつかレビューを流し読みして今一つ惹かれず、未購入だったのですが、キャンペーンで買いました。やっぱり月村先生は素晴らしいです。本作では特に空が胸の内に抱いている被害妄想や嫉妬、自己憐憫など誰でもが多少なりとも
っているネガティブなというか本質的な性質の描写が素晴らしく、それを受け止める隻介のセリフにも助けられて、不思議なほど肯定的な気持ちになりました。自分の中にも間違いなく息を潜めて存在しているそういう思考を受け入れられたという感じです。自己肯定感が低く初めの頃は恐ろしいほど冷めた心を内包していた空が徐々に前向きになるところも嬉しかった。のに自虐的にひねくれた負の思考ループにはまって隻介から離れる空に、やっぱりかー、もー、がんばれーとヤキモキしたりもしました。堤家の面々が本当におおらかで情に篤くてほっこりしました。もちろんBのLな部分も良かったですが、前半の空の内面の描写が丁寧だった分、家族になったあとの成長や葛藤も知りたいと欲が出てしまって、あと50ページくらい続きを読みたかったです。
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