七地寧先生の小説を読むのは初めてです。
この小説は、2015年に発行されていますが、笠井あゆみ先生の表紙とあらすじに惹かれて購入した人が多いと考えられます。
表題の意味が解らないまま読み終えましたが、七地寧先生はあとがきでそのことについ
て触れていないので、意識の底に置いたまま読んで差支えが無いのだと思います。七地寧先生は、この小説を書き上げる前に命にかかわる大病を患ったそうなので、小説の主題はその時に経験したことが基になっているようです。
私たちは、普段自分の眼に見えるものや信じていることに従って生活しています。自分の目に見えないものは存在しないと思っています。自分の感覚で捉えられないものは存在しないものと考えています。正月に神社仏閣に参っても、神や仏の存在を感じることができないので神や仏はいないと思っているけれど、古来より多くの人が参拝しているのでその風習に倣っているのです。けれども、事あるごとに神社にお参りをして神頼みをします。
超常現象のようなものを体験しないと、私たちの意識はなかなか変わりません。
この小説に出てくる個人や内容は想像上のものかもしれませんが、時折挟まれている言葉に人が生きていくうえでとても大切なことが含まれていて、七地寧先生はこのことを伝えたくて、この一見単調にも思える一般の共感を得にくい術者の世界を書いたのだと思います。
私は、唯一無二のこの小説が好きで、時々読み返します。
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