スポーツで体型キープなので、「異様なほど太ってサイそっくりになったとしても、僕が君を愛する気持ちは1ミリだって減りはしない」という台詞の付加も忘れない作家の職人力。短期間に燃え上がったものでも、愛の永続性を彼マックスの言葉で締めて、作り手が
読者に安心材料を添えた巧みなエピローグ。未来に繋がるもう一つの慶びにも触れて、幸せな形をもっと確かめたいニーズに応える読者サービスが、親切(過剰!?)といおうか、監視とは執拗な!、といおうか。コミックス既読の私には、不動産投機の餌をばら蒔いて自滅の濃厚な可能性を匂わせるこのノベル版は、確り処罰感情をも晴らしてくれて、心理的な決着感覚はより強い。(第一、悪役の末路を1ミクロン位は本物のシビアな原作に近づけた?。
過去に囚われてないで前へ踏み出そう、とのメッセージ性は、ヒロインが受けてきた実際の被害の程をマックスが知らなかったとはいえ、彼女の付けた踏ん切りによって高らかに肯定された。付けてくれた自信が促してくれた。そこが美しい背骨となっている作品だと思う。
クライマックスでちょっとした騙しがあり、読者に、なになにどういう事?、との小さな戸惑わせを起こして、ヒロインの嬉しいサプライズを少しでもヒロインと共に読み手も分かち合わせようとの、作者の「配慮」的な持っていき方が老獪。
ここの小技は漫画にはなく、あちらは、マックスが物件内覧後もまだ尚転売を考えている人間に描くことで、最後まで読み手にも不信を抱かせる余地を引っ張るので、構成が対称的だ。
大富豪ぶりをどれだけ披露されても、私はどこか素直に浸れない。ところがこの大富豪氏、ヒロインを札びらで扱っていないで、人として、互いに男と女として、しかも紳士であらんとして、というのが読んでいて気持ちが良かった。彼女の脱皮を手助けする所、魅力を見出だす所、頑張って自制心を発揮する所。どれも話の筋として良かっただけでなく、描写にナチュラルな感じがあった。まだ男女の仲とまで言えない時に彼の財布で買い物しないのも当然で、好感。
数ヶ所、主語不要の日本語表現だからこその、重文なのか複文なのかどちらとも取れる構造が気になった。
しかし、ノベルの方がコミックよりロマンス成分が強く感じたのは、二人が東に西にと親密な時間を過ごしたことを表す頁数の量の方ではなく、二人のシーンに、二人の間にあるものが書けていたからだと思う。
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