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序
私が東大を去ったのは昭和三十二年十二月であるが、その後文筆・溝演に忙しく、とうとう過労のため本年一月から肝臓の病気にかかり、今なお医師の手をはなれることができない。 今年に入ってからはつとめて仕事をことわり、静養本位に過しているが、それでも安保問図を中心とする最近の時局は療壺中の私をも引き出して、いくつかの短文を害かせ、短い講演をさせた。こういう状況のとき、たまたま東大出版会からのすすめがあったので、急に思い立って本害を編むことにした。
第一部は民主化と平和を中心とする文章と講旗、第二部は人間形成を主題とするものである。二、三のものを除き、昭和三十三年、二十四年、三十五年(六月まで)の執筆もしくは講演の中から選んだものであって、前著『主張と随想』および『私の歩んできた道』につづく私の論文・講演集である(各々の文章の発表された時期と掲載紙名、もしくは諧演のなされた時期と機会などは、各篇の末尾に記しておいた)。
日本の民主化は今危機に立っている。これを前進させるためには、国民各自の良識と勇気を要する。本害はささやかな文章と講演集ではあるが、愛する日本の政治と教育の進歩のためにいくらかでも役立つならばという思いをもって、世に送るものである。
昭和三十五年七月二十五日 東京自由ケ丘にて 著者
目次
序
Ⅰ 平和と民主化のために
終戦記念日に思う
日本の進路
現下の社会情勢とキリスト教
戦後世界の精神的危機
世界の平和と日本
教育の危機
政治と教育
日本民主化のゆくえ
平和を維持するもの
大学と軍事科学
日本民主化の将来
内村鑑三とフルシチョフ
国民の安全を保障するもの
権力と教育
ズボン聖書と国会
内村鑑三の非戦論
日本の政治に直言する
民主主義の危機
この後に来るもの
Ⅱ 人間形成のために
教育の本質と教育者の使命
人間形成について
科学と教育
科学と道徳
人のためにつくせ
人間と人生
道徳教育