西暦1888年、浅草。古来より日本に巣食うヒトならざるモノ《マガツヒ》との戦いにより焦土と化した土地は、英国式の蒸気技術を用いて復興を成すことに成功していた。国内外からあらゆる素性の者が集い、無秩序な拡大を続けた無法都市には体を蒸気義体に置換した者たちがあふれていた。伊奈土楽もそのなかの一人であり、先に行われた内戦にて使用された実験兵器ーー蒸気兵の生き残りであった。
戦いの日々が終わり、世界が平和へと向かうなかでも土楽はかつての仇を見つけるため、物騒な依頼をこなす日々を過ごしていた。
《士族》。超常の力ーー導術を用い、人間離れした身体能力を有する究極の局地戦闘民族。そんな《士族》の一人を見つけるため、土楽は旧知の仲である加東から蒸気船を護衛する依頼を受ける。
難なく終わるはずの依頼だったはずが、船は《士族》の襲撃を受ける。バタバタと仲間たちが倒れるなかで、土楽は自身の運命を変える出会いを果たす。