「俺は君が思ってるより、ちゃんと恋を知ってるし……君が好きだよ」村娘のエルヴィールは、人買いに売られそうになったところを、国一番の天才魔法使い・ヴィルへイムに救われ、押しかけ弟子に。貧乏で甲斐性なし、ぐうたらだけど優しい彼と過ごすうち、気づけば恋心でいっぱいになっていた。思い切って「お嫁さんになりたい」と告げると、彼は困ったように頭をかいた。やっぱり、好みじゃないのかも。――そう思った矢先、左手の薬指にそっと指輪が。恋も生きるのも不器用な彼。でもその不器用さこそ、たまらなく愛おしい。任務を終えた夜、ヴィルへイムはめずらしく甘く囁く。「今日は初夜だろ。寝かせると思ってる?」けれど彼は、心の内に重く苦しい過去を抱えていて――。