「こんな世界、滅んだって構わない。滅ぼさないのはお前がいるから――」持参金が望めない貧乏伯爵家の末娘・リサは幼い頃から王宮で侍女として仕えてきた。主は強大な魔力から周囲に恐れられ、隔離された第一王子・オルラース。最初こそ怖れていたものの、向き合ううちに胸に宿ったのは切ない恋心だった。そんな中、オルラースが戦に赴き行方不明に。誰もが「死んだ」と諦めても、リサだけは帰還を信じ続けた。生きているという確信が揺らぎ、幾夜も赤く揺れるあの瞳に胸を焦がしてきた。そんなある日、痩せこけ、傷つき果てたオルラースが帰ってくる。その身に宿したのは、この世を滅ぼせるという最強の魔力。喜びもつかの間、彼が口にしたのは衝撃の言葉だった。「お前は俺の妃になる意志はあるか?」「……えっ?」「世界平和と引き換えならどうだ」確かに世の安寧は大切だ。でも、どうしてそれが結婚に?運命に翻弄された二人の未来はいかに。