わたしたちの思い出は消えてしまっても、
感情は消えていないはずよ。
ルーシーが目を開けたのは病院のベッドで、付き添っていたのは、
義理の家族の天敵である、アントニアディス家の長男タナシスだ。
彼は、自分たちは婚約していると言ったが、彼女に記憶はない。
6年前、ほんの一瞬の出会いで惹かれた彼が、わたしの婚約者!?
事故で頭を打ち、この2カ月間の記憶を失ったのだ。
ルーシーの義理の家族とタナシスの家は海運業を営んでいるが、
両家の不仲から投資家たちが手を引きはじめた。
ふたりの結婚は両家の関係の修復を見せるための契約でしかないはず。
なのに、病床のルーシーに献身的な姿を見せるタナシス。
ルーシーは彼に愛されていると実感するが――。