嵐は野の花に小さな命を授けた。そして野の花ごとさらっていき――。
「オーロラ」誰もいないはずの自宅に人の気配がして、オーロラは驚いた。黒ずくめの姿で立っていた男性は半年前、彼女が運命を感じ、ニューヨークで純潔を捧げた富豪セバスチャンだった。あの夜の彼は私の名前も知らなかったはず。なのになぜイギリスに?「君のおなかの子は僕の子か?」セバスチャンが尋ねた。「あなたの子よ」オーロラが答えると、セバスチャンは彼女を抱きあげ、スコットランドにある居城へ連れていって閉じこめた。母と子を永遠に自分のものにするために。ただし、彼は二度とオーロラに触れようとはしなかった……。
■日本デビュー後、快進撃を続けるL・M・ワイトはドラマチックな筆致と詩的な表現を得意とする作家です。ヒーローによって城へさらわれたヒロイン。心に深い傷を負い、孤独な人生を歩む彼に、ヒロインは一途な愛を捧げますが……。切なさたっぷりの感動作です!