「君の声も、ぬくもりも、全部――欲しいんだ」宿屋の娘オリビアは、夜ごと同じ悪夢にうなされていた。白く霞む視界の中、誰かが泣いている。崩れ落ちていく幸福。そして、彼女を拒む冷酷な王子・リチャード。目覚めた瞬間、オリビアは悟る。あの夢は“前世の記憶”。自分はかつて、彼に愛されぬまま死んだ妻・レイナだったのだ。今世こそは、幸せに生きたい――そう決意した矢先、運命は残酷にも彼と再び巡り合わせる。「君に……触れたい」低く熱を帯びた声が、心の奥を震わせた。この手を取れば、また同じ結末が待つかもしれない。それでも、冷たさの中に宿る、彼の優しさを拒めない。過去と現在が交錯する、甘く切ない転生ロマンスの行方とは。