「……ベッドに誘ったら、軽蔑されるかな」伯爵家で冷遇されて育った三女・イレネは、盗賊団の一味として捕らえられた“賊”へ食事を運ぶよう命令される。地下牢の中にいたのは、領境で密やかに逢瀬を重ねた黒髪の青年・アーロンだった。なんと彼の正体は隣領地ヴィレネンを治める侯爵家嫡男。しかも、無実の罪で投獄されたのだという。トゥマーラ領の失態の代償として、彼が望んだ条件はひとつ。イレネを“人質”としてヴィレネンへ連れ帰ること――。人質としての立場を覚悟していたイレネだったが、そこで待っていたのは、思いがけない優しさと安らぎだった。アーロンは最初からイレネを人質とは思っておらず、ただ連れ出すための口実だと明かし――「もっとたくさん、かわいい声を聞きたいよ」